鹿屋市に合併前の吾平町が平成8年(1996年)に発掘した「中尾地下式横穴墓群」(吾平町上名字中尾に所在)では、これまで8基の地下式横穴墓が確認されており、その中でも6号墓からは「象嵌装大刀」の外に鉄刀が2点、鉄剣が1点、鉄鏃が7点(5個体、2集合体)、耳環2個、刀子3点出土し、平成23年(2011年)2月23日鹿屋市の指定文化財となりました。下記の遺跡全景写真(左側)は、鹿児島県立埋蔵文化財センター発掘調査報告書 (87)より借用しました。
7号墓からは県内初の発見となった円頭大刀も見つかっており、この墓域に埋葬された人はかなり位の高かった人ではないかと考えられています。出土した土器などの遺物から推定して、6世紀後半から7世紀初頭の古墳時代とされています(異説もあります)。以下の図は地下式横穴墓の模式図です。
「象嵌装太刀」の象嵌とは、「象」がかたどるという意味を持ち、「嵌」がはめるという意味を持っていることから、異なる材質同士を嵌め込む技法のことで、この刀には鉄に銀がはめ込まれています。刀とツバとハバキ(刀を固定する部分)にハート形文様の心葉文、ハバキの上部と柄頭の金具に二重半円文が施されていて、鹿児島県では象嵌技法が施された出土品としては初めての発見となりました。また、ツバに心葉文を持つ刀は全国でも16例目、九州では4例目と大変貴重な出土品です。「心葉形(心葉文)」は鳳凰が羽根を広げた形を表したものだそうです。
「象嵌装太刀」の出土物とそのレプリカは、「鹿屋市串良歴史民俗資料室」に展示されています。
中尾遺跡と遺物は、古代において吾平にかなり大きな有力者がいて、工芸技術面で”先進性”のある繁栄した地域であったことを裏付けるものであると思います。
(文責:朝倉悦郎)